結婚式の「持ち込み料」
今回は結婚式場の持ち込み料のお話です。
新郎新婦さんにとっても結婚式を挙げるにあたり「持ち込み」は切っても切れないワードになります。
我々ブライダル業者の立場としても「持ち込み問題」は何年も前から式場にとっても、業者にとっても課題の一つでもあります。
式場側の持ち込みに対する考え方
表向きは持ち込み無料の式場や、一部の内容を許可している式場もあります。式場側にとって「持ち込み」されることを嫌がる理由ってご存知ですか?
単純に売上が減るという安易な理由よりも、将来的な利益や企業としてのリスク回避が大きな理由でもあるのです。
ネットでは「ボッタクリだ!」「そんなに利益がほしいのか!」「違法だ!」なんて書いてありますが、全てが正しい情報ではありません。
結婚式場も企業ですから、企業のルール、年間施工組数、売上目標など、世の中の会社でよくある当たり前のことを行なっているにすぎません。
ただ、実際に問題となっているのは少し別の部分にあるのです。式場としてのルール、法律的な問題、新郎新婦にとっての選択など、あらゆる角度でお話します。
持ち込みによる利益減少
その理由の1つは、持ち込まれることによって、式場の利益に繋がらないという単純な事情があります。
大手式場になればなるほど高額なマージン(手数料)を乗せて商品サービスを販売していることもあり、持ち込まれればその分の売上(利益)は少なくなります。また、式場の提携業者の売上にも影響することになります。
マージンの掛け率は式場や提携業者・業種によって異なります。マージンの割合が多い業種(商品)では60%も金額が加算されているケースもあります。
新郎新婦が支払う金額は20万
↓
式場の利益となる金額は12万
↓
その提携業者の売上金額は8万
上記の場合は「12万円」が式場の利益となります。持ち込みが行われると、その分の利益が減少してしまうのは一目瞭然です。
そこで「持ち込み料」という項目を設定することによって、減少する利益の補填、持ち込み料を高額に設定することで「持ち込み防止」を目的としていることもあります。
持ち込み料の設定
「持ち込みしてもいいですが、10万円の持ち込み料がかかります。」というような説明を今まで受けてきた新郎新婦さんもいるかもしれません。
この持ち込み料が違法だという話題などもありますが、実は専門家によると「違法性は少ない」という見解なんです。
実際、熊本の式場でも持ち込みができない状態で契約していたのに、新郎新婦側が持ち込みを行いたいとゴネていたそうですが「裁判しますか?」と、式場から言われた方もいました。
ということは「違法性はない」と式場も認識していることが分かります。
問題となっているのは「事前に正確な説明が行われていなかった場合」です。
この不利益事実の告知が行われていない場合は、契約後でも解除できるということになるようです。
具体的な話をすると、一部の式場で契約前に持ち込み料の詳細や持ち込み禁止している、制限している内容を新郎新婦に伝えていない、説明していないということです。
「契約の時にそんな話は聞いてない」
「ちゃんとした説明がなかった」
という、契約前に十分な説明が行われていなかった、新郎新婦が理解せずに契約を行なっていた、ということが原因でトラブルが起こっているという実態もあります。
「持ち込み料」は式場の利益確保・持ち込みの防止の策でもあること。
進行を妨げる外部業者を排除
結婚式当日の挙式・披露宴を円滑に進行するために、式場スタッフは分単位でスケジュール管理・連携を行なっています。
そこに外部の誰か分からない業者が進行を無視した撮影や、挙式の進行を妨げたりするケースも中にはあるのです。
例えば、外部カメラマンの場合だと挙式中の動きや撮影する場所によって牧師さんやスタッフさんの邪魔になったり、足音が響いて挙式に集中できなかったり、何かを倒したり・・なんてことがあると新郎新婦だけでなく、ご両親やゲストの方にも迷惑がかかってしまいます。
披露宴中は分刻みでスケジュール進行を行いますので、カメラマンが進行を考えずに撮影を行なっていたり、テーブルフォトの時間が必要以上にかかったりすると、後々の進行に影響してくることになります。
そんなことがあってしまうと、ゲストの目に映るのは「式場の悪い印象」になりますね。
しかも、万が一のことが式場内で起こった場合、基本的に建物内の出来事なので式場が責任を持たなければなりません。
一部の外部業者やフリーランスが式場で悪態や進行を妨げる事態が過去にあるというのも真実。
その理由から外部業者を持ち込ませると式場側にもリスクが伴うこと。
企業としてのリスク回避
何年か前に「外部のカメラマンがご祝儀を持ち逃げした」という報道がありましたね。
あの時の式場側の説明は、
「外部のカメラマンが行なったことで、式場スタッフの行為ではない」
と式場の責任ではないという説明をされていましたが、管理体制や責任逃れなど、式場が悪い印象を世間で話題になりました。
結婚式場にとってイメージはとても重要です。
そんな中、「あそこの式場はご祝儀盗まれたとこよね」という悪い印象を持たれてしまうリスクがあります。
また、外部カメラマンの素行や態度、身だしなみなども問題がある場合もあるようです。
という結論になります。
でも、持ち込みを許可している式場はたくさんありますよね。
それは、新郎新婦さんの望みでもあるからです。
リスクをとってまで新郎新婦さんの要望を叶えてあげているのは、式場さんのご好意だと私は思っています。
そのことも知らないのに違法だとか、ボッタクリだなど適当なことを並べて新郎新婦へ自社商品を販売している業者も全国の中には存在してます。式場で撮影させてもらっているのに意味が分からないと思いませんか?
企業としてのリスクを背負ってまで「持ち込み」を許可している式場もあるということ。
一般的な企業として考えても、自社の敷地内に規則・制限を設けるのは当然の事でもある。
持ち込みの種類
結婚式を挙げるにあたり、カメラマンや衣装だけでなく、たくさんの内容や項目があります。
その中で「持ち込み」に対してどのような規則や制限を行っているかなどの事例をご紹介します。
写真や映像のカメラマン
スナップカメラマンやビデオカメラマンの持ち込み規制に関しては、当日の結婚式の進行を円滑に進なければならないという理由や、式場提携業者のカメラマンの方が撮影に慣れている、スタッフ同士の連携にも慣れているという理由で持ち込みを規制している会場が多いです。
また、式場提携カメラマンだけが撮影を許されている場所(外部のカメラマンは撮影ができない場所)などを設けている式場もあります。
お支度室・ブライズルームの撮影禁止
チャペル内の撮影禁止
チャペル内の壇上へ進入禁止
ビデオ撮影の禁止
衣装・ドレス
よく言われるのが「衣装の保管料として」という説明などされていることもありますが、明確な理由がない場合が多いのも事実です。
「保管料ってなに?他の機材や前日に持っていくアイテムも保管してもらうでしょ?」と言われると「でも、決まりなんで・・」というケースも聞きます。
衣装は金額も大きい項目になりますので、利益にも他の項目より大きく影響するのも事実です。
衣装の持ち込みは1点に付き3万〜5万という設定が多くあるようですが、式場によってこれも様々な設定があります。
新婦の好みにが大きく影響してくることもあり、衣装の持ち込みを許可している式場もある。自社でドレスショップ運営を行っている式場は持ち込み禁止のケースもある。
料理・ケーキ・生花
衛生法上の問題で責任が持てないという理由から、持ち込みを禁止している式場が多いです。
特に料理やウェディングケーキなど、ゲストの口に入るものには厳しく規制しているはず。
万が一、食中毒など起こってしまうと最悪営業停止処分になってしまいます。
生花に関しても衛生面の問題で持ち込みを禁止している式場がほとんどです。
ブーケ・ブートニア・贈呈用花束に関しては持ち込み可能な式場と持ち込み料が必要な式場など分かれていることもあります。
ヘアメイク・着付け
正確な話をすると美容師法という法律があります。
美容業務を行うにあたり、事業届けを申請している場所・店舗のみ美容の施術ができる。という法律があるんです。
冠婚葬祭の儀式の場合はこれを除く。という結婚式だけは美容師さんが出張して髪型をセットしたり、メイクを行うことを許可されています。
花嫁さんにとってはヘアメイクは特に大事にしたい部分だと思いますが、式場によっては「式場の中に提携美容室(お支度する場所)がある」という理由から、外部の美容師は立ち入れないことで持ち込みを禁止している式場もあります。
一部のホテルや式場では別室を設け、部屋の使用料、もしくは持ち込み料を支払うことで解決できることもあります。
その一方、普段からヘアメイクの持ち込みを許可されている式場もあります。
引き出物・引き菓子
持ち込み料を支払えば引出物や引菓子を持ち込みできる式場も多いです。引出物1個につき300円〜500円などです。
もし、引出物や引菓子を外注する場合、
という詳細を把握した上で式場に相談することが望ましいです。
司会者
費用を削減するための目的よりも、頼みたい司会者がいる。という希望の場合がこのケースです。
式場によって許可されていることもありますが、披露宴の進行に大きく関わってくる項目ですので、オペーレーションが円滑に進めることができるのが大前提となります。
式場によって専属の司会者の中から指名できることもあります。
招待状・席次表などのペーパーアイテム
招待状や席次表・席札などのペーパーアイテムは、ほとんどの式場で持ち込み可能です。
持ち込み料は、ほとんどの式場でかからない項目になります。
主に手作りされることが多いペーパーアイテムは費用の節約だけでなく、デザイン面にこだわりたい・二人らしい披露宴の印象にしたいという理由もあり自由に制作することが可能です。
上映する映像演出(オープニング・プロフィールなど)
披露宴で上映するオープニングムービー、プロフィールムービー、エンドロール(結婚式当日のエンドロール以外)は事前にDVDにして式場へ持っていくことになりますが、必ずしも式場へ依頼しなくてもいい項目になります。
よくあるのがプロフィールムービーを新郎新婦さんが手作りすることも多いです。
また、外部業者へ依頼して制作した映像を上映することができます。
上映する映像に対して持ち込み料がかかることはほとんどありません。
その代わり、外部業者や自作したDVDを上映する場合、プロジェクター使用料が必要になる式場もあります。
式場見積もりの変化
先ほど紹介した「式場によっては持ち込みを行うことができる項目」は、結婚式の費用に直結してきます。
ただ、全て持ち込みできるからと言って、やみくもに持ち込みしても、安くなるとは限らないということを知っておいてください。
なぜならば、結婚式場が提示する見積もりの書き方は「色々なケース」を想定してできています。(一部の式場では通じないかもしれませんが・・)
営業職や企業営業などを行なっている新郎新婦さんはお分かりかと思いますが、見積もりには値引きの見せ方がありますよね。
式場も持ち込みされること想定している見積もりや、持ち込みを行わないことを条件とした見積もりの出し方など実際にあります。
その違いは当然、値引き金額です。(特典として適用していることもあります)
全て持ち込み可能だからと言って「持ち込む」ことを選んだとしても、値引き金額やフェア特典などを調整することは容易に考えられますし、実際にそのような見積もりも多く見てきました。
新郎新婦さんが考えなければならないのは「何を・何のために持ち込みするのか」ということ。
値引きがなくなってしまうような持ち込み方をすると結果的に高くなることもある。
目的に合わせた”持ち込み”が重要
持ち込みをすることで費用が大きく変動しやすいのが以下の項目です。
衣装・写真・映像関係
引き出物・引き菓子・ペーパーアイテム
費用の削減が目的な場合、持ち込むことで大きな効果があるのは衣装です。
ゲスト人数が多くなればなるほど引き出物やペーパーアイテムも節約できる金額も大きくなってきます。
逆にゲストが60名以下の少人数な場合、引き出物やペーパーアイテムを持ち込みしたところで数万円程度の節約にしかなりません。衣装の場合は軽く10万以上差が開くこともあります。
ウェディングドレス・カラードレス・タキシード・色打掛・紋付袴を当日・前撮りレンタルの場合
式場レンタルする場合 50万〜80万
外部のドレスショップ 30万〜40万
ただし、ドレスの種類、ブランド、メーカーによってそもそものドレスの価格が異なる場合があります。
安いドレスショップでは上記の金額よりもっと安くレンタルすることもできるでしょう。
逆に高級ブランドドレスメーカーで全て揃えていくと100万以上かかるケースも珍しくありません。
写真や映像を持ち込む別の理由
写真や映像の場合、金額を重視する新郎新婦さんが多いとは思いますが、
というケースも多くなってきています。
費用を抑えたいのはみんな一緒ですが、式場の商品に価格以上の価値を感じていない方が増えているのも事実です。
カメラマンの持ち込みに対して規制があってもなくても、式場の写真や映像商品に値段相応の価値を感じていれば、そもそも「持ち込みたい」とは思わないですよね。
これは結婚式場の仕組みが関係していることがあります。
顧客目線のサービスや商品開発、現代のニーズに合わせて対応していくのが求められている時代なのですが、商品単価とマージンの関係、大量の撮影件数で人材不足が理由となりアルバイトや派遣を利用して施工する。
アルバイトカメラマンの教育を行なっても日当1万〜2万では意識も技術も育たない。
技術が育ったとしても、安い賃金や規制などの不満から、カメラマンとして独立してしまう。
その結果、技術の向上や現代のニーズに必要なサービスが提供できず、本来の商品価値に合わないアルバムや写真などでき、新郎新婦が式場の商品に魅力を感じなくなってしまう。という悪循環になっていることもあります。
事実、大手式場になればなるほど1日あたりの結婚式組数も多く、それだけカメラマンが必要となってきます。
しかし、今はカメラマン不足という現実で式場で依頼したくても人手不足が原因で頼めないというケースもあります。
式場側としても状況を変えたいという考えもあると思いますが、
式場を建設する際に写真スタジオを併設するために出資を行なっていることや、
過去の取引や付き合いの中、式場側も安易に提携先を増やしたり変更することができない事情を抱えていることもあるのです。
あなたの場合はどうなる?
ここまでは、式場の仕組み・持ち込みの目的・見積もりへの影響をお話してきましたが、多分こう思っていませんか?
「仕組みや内容はわかったけど、、、じゃあ、どうすればいいの?」
そうなんですよね。
選ぶ内容も新郎新婦さんによって違いますし、そもそも式場によって料金も内容も違うので他人と比べることが難しいのです。
アドバイスするとすれば、今のあなたの置かれている状況で選択肢が異なってきます。
式場契約前の場合
第三者のプロのアドバイスが受けられるサービスを利用する。
具体的にはブライダルカウンターを利用して式場を決定すると、式場紹介だけでなく、結婚式の準備期間や当日まで様々なサポートをしてくれる場合があります。
全てのブライダルカウンターが行なっているわけではないようですが・・。
新郎新婦にあった式場を紹介してくれることよりも、準備期間で迷った時や、費用の悩みなど、新郎新婦さんが直面する問題は共通していることが多いことから、
プロの第三者目線でお二人の場合はこうしたらどうですか?と、お二人のことを考えてアドバイスしてくれる強力な味方としてブライダルカウンターを利用する「価値」があると思います。
また、あなたがこだわりたい部分の専門店へ相談・情報を聞くという方法もあります。
例えば、インスタでめっちゃ好きなカメラマンがいたとしたら
「結婚式や前撮りを全部お願いしたいと考えているけど、どんな式場だったらとかありますか?」
など、ブライダル業界で活躍・仕事をしている人を頼ると、その人や会社が持っている式場の情報や、持ち込みするための方法などを提案してくれることもあります。
実際、式場紹介を行なっているフォトスタジオも存在していますし、その場合は持ち込み料のサービスや色んな特典なども式場が付けてくれているケースもあります。ドレスショップやプロデュース会社でも同じことが言えます。
今は式場を決める前の情報収集がとても重要です。
全ては「どんな契約をするか」に、その後の結婚式準備や費用に大きく影響してきます。
式場契約後の場合
契約後の場合は、最初にどんな契約を行なっているか?ということがとても重要です。
例えば、持ち込みが一切できない。という規約の場合、残念ですが変わることはごくごく稀だと思ってください。
この場合は「どんなことで悩んでいるか」ということを担当プランナーさんへ真剣に相談することをオススメしています。
プランナーさんはお二人の要望や希望をできるだけ叶えたい!と思っているはずです。
だから頼って欲しい。頼られると嬉しい。と思うはずです。
決して「持ち込みさせてよ」とか、「安くできないの!?」なんてクレーマー的な要素は出してはいけません。
そうなると、どうやって断ればいいのか?という思考になってしまうのが会社員であるプランナーさんや上司が普通です。
逆に「〇〇さんだから言うけど、、本当はこんな風にどうにかできる方法ありませんか?」と、真剣にあなたを頼っているんです。と言う気持ちを伝えた方が、よっぽどいい結果に繋がる確率は上がると思いますし、そうなったケースもあります。
最後に
色んな情報が今の世の中入ってきます。友人であったり、職場の人であったり、インターネットやSNSでも色んな情報で溢れています。
結婚式場の持ち込みに関することは年々変化もし、式場も定期的にルールや規約も変わることがあります。去年は持ち込みできたけど、今はできない。なんてザラにありますし、逆もしかりです。
日経新聞でも「持ち込み問題」が取り上げられたように、結婚式場の持ち込み問題は今後注目されていくかもしれません。
もしそうなった場合、ブライダル業界として「持ち込み料はなくなっていく方向になる」かもしれませんが、逆に持ち込み禁止になる式場が増えていく可能性も十分考えられます。(と言うか、そんな法的セミナーが式場向けに行われているんです。)
いかに持ち込ませないようにするか。という視点や思考よりも、
どうすれば新郎新婦に持ち込みしたいと思わせない式場の仕組み作り
を行うことを考える式場が勝ち組みになる気がしますけどね。(偉そうですみません)
そうなってくると、持ち込み専門で行なっている会社のやり方も変わってくるのではないでしょうか。
新郎新婦さんであるお二人にとっては、自分たちの結婚式でどうしたいか?どんな結婚式にしたいか?など、今まで以上に正しい情報や知識を身につけて結婚式の準備に取り組まれると、満足する結婚式を実現することができると思います。
最後までご覧いただきありがとうございました☆